
前回に引き続き、ネックとフレットについてです。ネック指板とフレットはギターの音程を決める大事な部分ですが、木に金属棒を打ち込んで作るため指板からフレットが浮き上がってくることがあります。
こんな状態です。

指板とフレットの間に隙間が開いて、端の方が浮き上がっています。
こうなると、浮き上がったフレットに弦が当たって意図しない音が出てしまったり、音がビリついたりしてきます。
元々フレットは、フレットワイヤという巻き状から切って打ち込むため、フレット溝の彫り方が広すぎた場合などには巻いてあった湾曲部が浮き上がりやすくなります。新品の場合はほぼ心配ありませんが、中古のギターを購入のときには注意が必要です。

フレットワイヤ
フレット浮きの大きな原因として時間経過にともなう木痩せがあります。木が痩せることで指板のフレット溝が広がり、フレットが浮き出してしまいます。またネックの逆反りが原因の場合もあります。軽度のものなら接着剤を注入してから押し込むことで直りますが、ひどい場合はフレットを抜いて打ち込み直しになります。
木痩せは木の経年変化で全体的に収縮してしまうことなので、それ自体はある程度避けられないものですが、ローズウッド、メープル、黒檀などの堅い木がネック指板に使われるのは、こういった木痩せを出来るだけ防ぐということにもなります。
シーズニングとは切ったばかりで水分を含んだ木を乾燥させることです。水分を多く含んだ木が自然に変形するのを繰り返し、ほぼ狂わなくなったところで終了させるわけですが、製品になった後の狂いが最小であるためには、ゆっくりとシーズニングされた木が良いことは言うまでもありません。
楽器になるような材木の場合、丸太のまま数年〜数十年、板材にして数年のシーズニングを経て、最終的に機械で乾燥させる場合もあります。
ギターを購入するときに木材のシーズニングまで確認するのは難しいですが、とくにフレット浮きは保管状況にもよるものです。急激な温湿度変化を避け、ネック指板の木痩せを最小にするように注意を払うことが必要です。また一般に言えることとして、保管時に水分が多いと変形につながり、乾燥しすぎだと割れにつながります。
今回で「ギターと木の話」は一段落ですが、"連載・ギター小噺"(今お読みになっている)の次回から、メルマガ配信に移行して更に突っ込んだお話を掲載していく予定です。どんなメンテナンスが良いの?どんなギターを選んだら良いんだろう?などなどお役立ち情報etcも掲載していきます。どうぞお楽しみに!