2011年10月23日

連載・ギター小噺 『ギターと木の話C』

icon_135.gifギターと木の話C〜ギターを選ぶときに・・・ボディとブリッジ〜

「木は切った後も生きている」という言葉どおり、時間経過や環境によって変化していくのが木材です。ギターも木製品ですので、木の特性を知っておくと仕上がりの良いギターかどうかを見分けるヒントになるかと思います。

エレキギターを除くほとんどのギター(ウクレレも含む)は、ボディトップ材の上にブリッジが接着されているという構造を持っています。トップ材は鳴りが良いと言うことで柔らかい木を用いていることが多く、一方ブリッジは堅い木で出来ています。

堅い木と柔らかい木・・・温度変化や湿度変化にさらされながらそれぞれが伸縮を繰り返すと、互いの収縮率の差から接着面に歪みが生じて、ブリッジが剥がれてしまうという悲しい結果になることがあります。

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お店でギターをご覧になるときに、ブリッジの端部を良く見てみましょう。たまにですが僅かでも浮いている場合があるので、そのような楽器は避けたほうが無難です。

またボディトップのブリッジ周辺部を観察してみて下さい。トップ材がポコッと膨らんで来ているようなことはないでしょうか?もしそうなら弦のテンションが掛かりっぱなしだった可能性があり、ブリッジにも負荷が掛かっています。ですからトップの平坦がよく出ているかどうかも、チェックポイントの1つです。

ブリッジ剥がれの原因は環境による劣化が大きいので、ギターを選ぶときのみならず、購入後も保管場所には注意をする必要があります。極端な温度差を避け、部屋を過湿にしないことが、ギターに負担を掛けずブリッジ剥がれを予防する上でも大切なことです。

もともと製作過程でトップの平面が十分でなく圧着がうまくいっていないケースもあります。また、高価なギターなどではメンテナンス性を重視してアニマルグルー(膠など)が使われることがありますが、このような接着剤は修理のときに綺麗に剥がせる利点がある反面、管理が悪いと剥がれやすさが裏目に出てしまうことも。ただこうした製作過程での問題は店頭ではなかなか確認できません。

ブリッジは接着剤で接着されているため、そもそも剥がれる可能性があること。保管時は必ず弦を緩め、過湿度や温度変化に注意して保管すること(ネック反りの防止にもなります)。こういったことを購入後も念頭においておけば、ブリッジ剥がれに泣かされることは防げるかと思います。

次回も続きで、弾きやすいギターを選ぶヒントなどなど。お楽しみに!

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2011年10月17日

連載・ギター小噺 『ギターと木の話B』

icon_135.gifギターと木の話B〜色も木目も味のうち〜

アフリカの黒檀(エボニー)は真っ黒な非常に堅い木で、エジプトの時代から珍重されてきたものです。仏壇やチェスの駒などにも使われる高級な木ですが、最近はとても希少で値段が高騰しているとか。ギターでは主に指板に使われます。

ピアノの黒鍵をエボニーと呼ぶことはよく知られていますが、それは元々黒檀で作っていたから。今では実際には色を表しているだけの場合が多く、黒檀はほとんど使われません。エボニーという木の名前が "黒" の代名詞になってしまったんですね。

堅い木、色の濃い木としては、ローズウッドも代表的なギターの材料です。堅くて良く共鳴するためボディ(サイド、バック)に適しており、こげ茶色のシックな色合いの美しさから指板にも使用されます。

このローズウッド、マメ科の一種でインディアン・ローズウッドやブラジリアン・ローズウッドといった種類がありますが、これにも "呼び名" としての使われ方が定着しているそうです。というのも、木材の流通では "色が似ているから" という理由で、全く異なる樹種の木材もローズウッドの名前で呼ばれるとか。例えて言うと一昔前、銀ダラだと思っていた魚が実はメロだった、というようなものでしょうか ^^;?

さて樹種の方のローズウッドですが、中でもブラジリアン・ローズウッドは銘木の評価高く、ハカランダとも呼ばれます。当然この木を使ったギターは高価なものになります。やはり絶滅のおそれがありワシントン条約で規制された樹木。

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インディアン・ローズウッドの指板材です

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楽器は確かに音を出してナンボという道具、しかし美しさという魅力もまた味のうち、ということでしょうか。


次回からはギター選びのヒントなどなど。お楽しみに!
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2011年10月10日

連載・ギター小噺 『ギターと木の話A』

icon_135.gifギターと木の話A〜家具職人も作る楽器〜

アプリコット・ファームがある日高・飯能地域は、古く林業でも栄えた土地です。杉やヒノキといった針葉樹が中心ですが、建材や家具材は日常生活の中でもとても馴染み深いものですね。定番の樹木なんていうのもあります。農機具の柄には樫の木、箸や櫛にはツゲの木、楊枝にはクロモジ。「おい、親父!クロモジ取ってくんねぇ」

さてヨーロッパの家具材の一つ、マホガニーをご存知と思います。中南米やアフリカに分布する広葉樹ですが、高級家具材やベニスのゴンドラの材料としても有名ですね。かつてはヨーロッパで主流の家具材だったそうで、ギターの材料としても使われてきました。

当時は手に入りやすい材料だったのでしょう。ギター製作者の中には家具職人出身の人もいたそうです。

現在のアコースティック・ギターの形が出来たのはアメリカです。移民時代に多くの職人達も新大陸に渡り、クラシック・スタイルからスチール弦と大きなボディを持った楽器へと変わっていきました。有名ブランドのマーチンやギブソンも、アメリカに渡ってギターを作った移民たちの一人です。

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導管(水が通る管)がくっきりと見える美しい木目のマホガニー。当時の典型的なギター材料の1つですが、需要が高かったため濫伐に遭い、現在ではワシントン条約で取引が規制されています。

日本では間伐されない山のスギ花粉が問題になりますが、いつの時代も家具や建物や楽器となって、私達の身近にいてくれる樹木との共存を願わずにいられません。

posted by A.C. at 04:00| Comment(0) | ギター小噺

2011年10月07日

メンテナンス日誌〜アコースティック・ギターの順反り(2)


今回の内容は

@順反りネックの修正 A純正の樹脂製サドルを牛骨に変更 

というご希望でした。

お預かりしたギターは3年前に新品で購入したという某アメリカ有名メーカー製。ご依頼主はエレクトリック・ギター中心に弾くため、アコースティック・ギターを使うことはそれほど多くなく、2〜3時間くらい月に数回程度の使用頻度とのこと。

アコースティック・ギターはエレクトリック・ギターと比べるとやはり弦高が高めなので、反っていなくても弾きづらさがあるかも知れません。ネック反りの修正と合わせて、2つ目のご依頼内容の「牛骨製サドル」の方も低めに製作し、弾きづらさを改善することにしました。

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@ 順反りネックの修正

オーナーさんは木造住宅にお住まいで、部屋には空気の流れがあるため、ギターの保管には適した湿度の安定した住環境のようです。冬場は乾燥対策のため、ギターケースの中に楽器用の保湿剤を入れて保管していたそうです。湿度を一定に保つのは難しいことですが、若干、多湿ぎみだったかもしれません。

通常、順反りの場合はトラスロッドを締めて反りを戻すのですが、まだ新品に近い今の状態でトラスロッドを回すと締めシロを減らしてしまうことになり、避けた方が良いと判断しました。

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トラスロッド部分


1週間ほどギターの様子をみながら調整し、わずかに逆反り気味の初期状態に近い形に戻しました。

ギターの保管ですが、使用頻度があまり多くない場合は、弦は充分に緩めた方がネック反りの防止になります。

A 牛骨製サドルの製作

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サドルの材質を変えると音色が変わります。牛骨はアコースティック・ギターのサドルとして伝統的ですね。今回は弾きやすさも考え、高さの調整も行いました。

試奏の結果ですが、芯の通った華やかさのある音になったと思います。


posted by A.C. at 17:47| Comment(0) | メンテナンス日誌